福徳寺

福徳寺の建立年代は、仏像台座の墨書に平治2年(1160)とあり、平安時代末期の創建を伝えますが、昭和28年の調査を兼ねた解体修理によって、鎌倉時代以前まではさかのぼらないことがわかりました。堂内に安置されている仏像は、中央に薬師如来坐像と阿弥陀如来坐像が並存し、毘沙門天・聖観世音菩薩の二体が脇に配られました。
「醫(医)王山福徳寺」の山号は天台宗系寺院のものであり、本尊は薬師如来となるでしょう。堂建立の施主や中心人物は不明ですが、大河原城址が指呼の位置にあることから、香坂氏や山号から天台座主であった宗良親王の存在が浮かんできます。

堂は桁行三間、梁間三間、一重、こけら葺であって、組物は隅柱のみ舟肘木を設け、軒一重疎垂木木舞打ちの簡素な建物であり、小規模でながら洗練された姿からは中央の寺院建築文化の風格が漂います。明治45年に特別保護建造物の指定を受け、昭和25年重要文化財の指定を受けています。